世の中にはたくさんのプラスチック製の植木鉢があります。
それぞれ特徴があってどれも良いものばかりです。
でも、バラやクレマチス等を栽培しながら販売する立場に立って考えると要望や改善個所は尽きません。
今までにも何度となく、展示会や新製品発表の時などに、
「こうしてくれたらもっと使いやすいのに」
「ここをこういうふうに改善してほしい」
と要望してきましたがどのメーカーさんにもなかなか聞き入れていただけませんでした。
そんな要望をかなえていただいたのが、兵庫県の「アップルウェア株式会社」さんです。
数か月前にいらっしゃって、「新しくバラ専用栽培用鉢を作りたいので、色々アドバイスをいただきたい」と。
よもや。私たちのような小さい園芸店の意見など聞き入れていただけるわけがないと思いながらも、沢山の意見を出させていただきました。
それは良く育って栽培しやすいというだけではなくって、売店でバラ苗を管理するときの事もいろいろ考えて要望しました。
話し合うこと数か月、何度もこうしたいとか、こうしてほしいとか改善点をお互いに出し合って。
それが全て叶う鉢が出来るなんて夢にも思っていませんでしたが、ついに出来上がりました!
「P.MスレンダーポットSQ6号」です。
要望その①「バラの苗によっては、やや根や茎の長いものがあるので少しでも高さが欲しい」
要望その②「栽培するにあたってコストと出来と重さを考えると土の容量は2,8リットルを確保してほしい」
従来の同型・同サイズのポットより約12ミリ高くなっています。一辺が155ミリ、高さ215ミリ、底辺が直径120ミリ。
そして土の容量はウォータースペースを取っても2,8リットルあります。
要望その③「廃水が良くて根がしっかりと育つ構造にしてほしい」
要望その④「平らな地面に置いたときでも排水の穴は地面から離して水が溜まらないようにして通気性を確保してほしい」
要望その⑤「穴は少しでも多い方が良い、そして穴の部分にも溝をつけてほしい」
見てください鉢の底はこのように中央の部分が山のように盛り上がっています。
これはアップルさんの「ロゼアスクエアポット」に採用されている構造です。
このポットは根張りが綺麗で植物がよく出来るんです。でも、こんな安価な小さいポットにこの構造を取り入れていただけるとは思っていませんでした。
排水の穴の部分にもちゃんと溝があって平らなところに置いても水が溜まる心配はありません。
要望その⑥「根巻きしないようにしてほしい」
見えるでしょうか?鉢底の4隅に縦にリブという突起があるのが。
これが鉢底で根がぐるぐると巻くことを防止します。
さらに嬉しいことにこれだけ排水が良いと、今世間に出回っている色々な土でも根腐れの心配が少しだけ改善できるかもしれませんね。
要望その⑦「沢山植え付けるときに重ねてある鉢が食い込んで外れにくいので改善してほしい」
先程の鉢底にあるリブを太く高くしてあるのでいくら重ねても簡単に外すことが出来ます。
生産者さんや販売店さん、うれしいでしょう?
さあて、ここからです!園芸店などで働くスタッフのみなさんも必見です!
僕とマネージャーが一番考えて強調したかったことがここからです。
園芸店のスタッフは女性も多くて、力の無い人も多いはずです。
そんな方々でも使いやすい、店舗や家庭の奥様方にもやさしいポットが欲しかったんです。
販売店の皆さん、こんな経験はありませんか?
バラには品種タグが必ず付いています。
冬は枝に、開花時は上の方と幾度か付け替えが必要になってきます。
たしかに支柱などで高くして挿しておけば問題ないのですが、それが外れると品種がわからなくなることもありますね。
それに、下の画像のように、低い位置にタグが付いていたり、差し込むタイプのラベルの場合、
水やりの時にこのようにラベルではじかれて水がちゃんとあげられないことがありませんか?
要望その⑧「ポットの縁にラベルをつける穴をあけてほしい、しかもビニタイ、帯ラベル両方付けられるように」
要望その⑨「しかし強度はしっかりと確保してほしいけれど、花が咲いたときは正面が変わるのでどこでも付けられるようにして欲しい」
あけていただいた穴が横に少し広い穴と、ビニタイがちょうど入る穴です。
しかもすべての面にあけてあって、それによる強度不足もありません。
その結果がこれです。
このように付けておくと剪定でラベルのある枝を切って迷子になることもありませんし、
水やりもちゃんと土に与えることが出来ますね。
しかも枝の向きが逆になっても違う穴に付け替えられますね。
要望その⑩「女性は力がありません(最近は男性も?)少しでも持ちやすくて、一度に2鉢持てるようにしてほしい」
要望その⑪「女性は手が荒れたり傷つくのを嫌がるので少しでもソフトな形状にしてほしい」
要望その⑫「土の容量はここまでと誰が植えてもわかるように印をつけてほしい」
右側の写真を見てください。コーナーに3本の筋が見えるでしょう?
これが絶妙な滑り止めになってとても持ちやすいんです。園芸店スタッフも、お買い上げいただいたお客様にもやさしい心使いです。
さらにその下には土の容量の目安になるラインがぐるっと全体に付いてます。このラインのところでちょうど2,8リットルになります。
さらにここまで優しい気使いは思いつきませんでした。(有名肥料メーカーのY氏のアイデアです)
左側の写真をよく見てください。ポットの上部は強度を確保するために返しがついています。
この返しは断面がとがっていて手が痛い時があります。このポットはここまで面取りをして丸くしてあるのでここを持っても手が傷つくことがありません。
要望その⑬「いくら栽培用といっても仕上がりはきれいにしてほしい」
このタイプの栽培ポットの中では最高の光沢ではないでしょうか?
本当にきれいです。
要望その⑭「現在流通しているトレーにきちんと入るようにしてほしい」
これは6ポットが入るようになっているトレーです。
同じ6号ポットでもはめにくかったり、トレーの突起が引っかかって取れにくかったりすることが良くありますがこのポットは底の部分が
他のものよりスリムになっているのではめやすくて外しやすくなっています。
現在色はグリーンとブラックの2色です。
2年生大苗を買って植え付ける皆さん。
園芸店で働く皆さん。
沢山のバラを扱う生産者の皆さん。
良く育って、植えやすくて、売りやすくて、扱い易いポットです。
春の開花まではこれで十分良く育ちます、もちろん根が一杯になってきたら大きな鉢に植え替えが必要です。
こんなわがままをすべて聞き入れていただいた「アップルウェアー株式会社様」本当にありがとうございました。
「お役様の声を聞いて仕事をする」基本ですね。
「P.MスレンダーポットSQ6号」今秋販売開始です。
もちろんまつおえんげいでも販売します。